65歳までの再雇用制度を導入した場合、対象高齢者の賃金については定年前より低く抑えることが一般的であり、またそのことが再雇用制度を導入する場合の大きなメリットでもあります。前述したように再雇用制度は労働契約を定年時に一度リセットして新たに設定することが可能です。労働契約を結ぶ時にはできるだけ一律いくらという決め方ではなくその従業員一人一人の労働条件に見合った賃金設計をする必要があるでしょう。再雇用後の勤務形態や職務などによっては新たに契約した労働条件においても定年前の賃金を継続することもあるでしょうから、その対象となる従業員の生産性にポイントをおいた賃金設計をされることが、本人のモチベーションの維持や賃金に対する納得性を高める為にも必要となります。
再雇用の場合の賃金について定年前より下げた場合、雇用保険から支給される「雇用継続給付」及び厚生年金保険から給付される「在職老齢年金」といった公的給付によって補うことが出来ます。これらの給付は再雇用された従業員にとっては賃金の低下を補い、トータルでの収入の低下を最小限度に抑えることが出来てまた会社にとっても公的給付を考慮せずに賃金を高く支払う場合に比べて、賃金コストだけでなく社会保険料も含めたコスト削減につなげることが出来ます。ただし、公的給付を活用できるからといって、その職務や勤務形態を無視して必要以上に賃金を引き下げるとモチベーションの低下を招くこともありますから、やはり生産性に応じた賃金を設定したうえで公的給付はあくまでも補助的に考えることが重要です。
上記(1)のように単に賃金を減額(定年前の75%以上)する場合に比べて(2)のように賃金の減額(定年前の75%未満)と公的給付を合わせて設定することが出来れば、本人の手取額を殆ど変えずに会社コストを減らすことが可能になります(賃金、社会保険料など)。
どういう理由でこのようなことが可能になるのかを説明する前にまずは、「高年齢雇用継続給付」、「在職老齢年金」というぞれぞれの公的給付について簡単にまとめて見ます。
《高年齢者雇用継続給付》
賃金が定年前に比べて75%未満に低下した場合、最大で賃金の15%が支給される。
高年齢者雇用継続給付は、再雇用された高齢者が雇用保険に引き続き加入した場合、以下の条件を満たした場合にその賃金の低下率に応じて最大で15%の賃金が、本人が65歳になるまで支給される制度です。
「受給要件」
@過去に雇用保険の加入歴が5年以上ある(60歳になった時点で5年に満たない場合は、5年になった時点で支給対象となり、65歳になるまで支給されます)。
A 定年後の賃金が、定年前の賃金に比べて75%未満に低下した場合。
「雇用継続給付の支給額」
(例:定年時の賃金を45万円とすると)
再雇用後の賃金 | 支給額 | 合計額 |
---|---|---|
337,500円(75%) | 0円( 0.00%) | 337,500円(75%) |
315,000円(70%) | 14,710円( 4.67%) | 329,710円(73%) |
292,500円(65%) | 29,396円(10.05%) | 321,896円(72%) |
274,500円(61%) | 41,175円(15.00%) | 315,675円(70%) |
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