上記のような労務トラブルの発生件数は、年々増加の一方です。 これまでは、従業員は経営者と比べると労働法に関する情報を得られる機会が圧倒的に少なく、また労働組合の数も11年連続で減少し続けており(平成17年データ)、いざというときに頼るものを持たなかったといえます。
ところがインターネットの急速な普及によって大量の情報が得られるようになり、労働法に対する認識度が急激に高まっています。ちなみにYahoo!JAPANで「賃金」 、「解雇」、「サービス残業」、「労働時間」、などの単語で検索をしてみました(平成20年1月)。
検索ワード | 賃金 | 解雇 | サービス残業 | 労働時間 |
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ヒット件数 | 1850万件 | 1960万件 | 1540万件 | 803万件 |
これだけ多くのホームページがあるのですからまさに情報が溢れかえっているのです。これらの中には、「残業代を請求して豊な生活を送りましょう」とか「会社を訴えるやり方を教えます」といったアドバイスをしているものもめずらしくありません。一昔前と違い、従業員が労働法に関する知識を手に入れること、自分を助けてくれるところを見つけることはいたって簡単なことになっているのです。
多くの経営者は、「就業規則を作って、有給休暇や残業代の計算方法などを従業員に知られてしまうと経営が成り立たなくなる」とおっしゃいます。しかし、これは従業員が労働法の情報を得ることができなかった時代における経営者の理屈です。会社に就業規則があろうがなかろうが、これらに関する知識や情報は、従業員は知っているわけで、現在、その権利を主張していないというだけのことです。
確かに割増手当や有給休暇等は、コストに直結する大事な事項であり、これらをはじめとする労働基準法で定められた基準は重荷だと感じる経営者がほとんどでしょう。しかし、それであっても、就業規則が会社にあることの経営におけるメリットのほうがはるかに大です。
就業規則がなければ、勤怠不良の従業員を解雇することもできません。それでも解雇を行った場合は、解雇権の濫用となってしまうため、解雇を取消し継続的に雇用するか、多額の和解金を支払ってやめていただく、というはめになります。就業規則中の解雇の条文が、ありきたりなものではなく、具体的にこのような場合は解雇を行うことが明確に定められている必要があるのです。
標題にあげたこんなトラブル、も、このようなことがあることを想定した上で、会社が不利とならないような内容が就業規則に定められてあれば、問題と呼べるものにはならないのです。
むしろ、就業規則で自社のルールが明確にされていることで、労務トラブルが起こらない職場風土を作ることが重要なことであると考えます。
現実的に労働基準法等の法律の水準は遵守しながら従業員に納得してもらえるような「活きた労働条件」を模索し、運用していくためにはやはり就業規則の整備が大事なのです。法律の基準を満たすだけではなく、これまでの職場慣行や現在の環境とすり合わせながら現実的な対処をおりこんで整備することが必要です。就業規則は、きちんと起こりうるトラブルを想定してそこから逆算して整備していれば会社を守ってくれるものだということを知って頂きたいのです。
就業規則を「作る、整備する」ということは単に「書類を作る」ということではありません。その本質は「会社のルールを明確に宣言する」ということなのです。
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